花とおじさん

43年生きてきて、初めての経験に高津は幸せに浸った。

そして、夢のような日々が始まった。

仕事で怒鳴られ落ち込んで帰宅した。さすがに、もう花ちゃんはいないだろうな。しかし、自分の部屋にはあかりがついていた。

戸を開けるとそこにはエプロン姿の華奈がいた。またまた高津は感激した。夕食の支度がしてあった。楽しい食卓が始まった。高津は華奈のつらい身の上を案じ、相談役になるつもりでいい人を演じ続けた。そして、華奈は、おじさんが心から笑っていると、明るくふるまった。

やさしさと思いやりにあふれた一夜だった。

翌日、高津が仕事に出かけた後、華奈はちらかっている部屋を掃除した。

♫おじさんあなたは、やさしい人ね。私をお家に連れてって♪

自然に〝花と小父さん〟の歌を口ずさんでいた。

♫私はあなたの、お部屋の中で、一生懸命咲いて慰めてあげるわ♪

歌いながら、部屋はとてもきれいにかたづいた。