「私とあなた」の関わり合いで、あなたが同性の場合は、階段を上るような楽な通じ方をする。あなたが異性の場合、積み木を重ねるような工夫や苦労を要する通じ方になる。しかし成功すれば、「やった」という喜びがあり、それまでの苦労は一瞬にして消える。

私とあなた。他人との関わり方で、「あなた」と呼ばれて、「はい」と答えるだけでは十分でない。「はい。何でしょうか?」の返事が好ましい。「はい」だけで終わると、そのあとに間ができて、会話は止まってしまう。「はい。何でしょうか?」といえば、対話が続き、一人では思ってもみなかった新しい世界を、縦に広げることができる。話を発展させるコツでもある。

「私たち」とは、簡単なようでむずかしい言葉だ。常に内容が変わっていく働きが、この言葉の中にある。私たちは、最低二人を指し、最高数は無限である。人間ばかりでなく、生きているもの、口のきけない植物なども、全て包括できる魔法の言葉だ。

「私たち」の言葉を使うとき、人は「私」を持たないようにしている。終わりの頃、誰もが自然と口にする言葉になるかもしれない。