ボクはママのヒーロー

ボクは、ママを助けるために、宇宙からやって来た。宇宙からずっとママを見ていた。

パパと嬉しそうに歩くママ。パパと結婚して幸せなママ。お姉ちゃんが生まれてバタバタと忙しくなったけど、なんだかすごく楽しそうだった。そんなママをボクは宇宙からずっと見ていたんだ。でも、ママは時々、一人ぼっちで泣く時があったよ。眠れない夜も過ごしていた。そんな時のママは、たくさん怒って、ハァとため息をつきながら涙を流すんだ。だから、ボクは心配になって、ママを助けるために宇宙から出動した。そして、ママのヒーローとして生まれてきたんだ!

最初は――

「変身!! 赤ちゃんヒーローだっ!!」

オギャーと大泣きしながら生まれたぞ。ママはボクの大きな声を聞いてホッとした顔をしていた。それから、たくさんの人に「おめでとう!」とか「よくがんばったねえ!」とか言われて、すごく嬉しそうだった。ボクも嬉しかった。二人になると、ママはボクをしげしげと見てボクのにおいまで嗅いでくる。そんなママはとびっきりの笑顔が止まらなくなったぞ!

「よし!! 第一任務完了!」

次は――

「変身!!ハイハイヒーローだ!!」

どんなところへもハイハイパワーでワープできる。ママはワープするボクを、「あらあら!」と言いながらバタバタと追いかけてくる。

「あ~! 疲れる~」とか言っちゃってるけど、すごく楽しそうだ。

もう、一人ぼっちで泣く暇なんて無いぞ!

「よし!! 第二任務 完了!」

次は――

「変身!! ヨチヨチヒーローだ!!」

たくさんヨチヨチしてママと追いかけっこをする。ヨチヨチを失敗して頭をぶつけて大泣きする時には、ママをすごく心配させる。でも、これも作戦さ! ママは、たんこぶ変身したボクを抱っこして、何度も何度も頭を撫でる。

「大したことなくて本当に良かったわ〜」とホッとして言ったかと思うとボクと一緒にスヤスヤとお昼寝さ! 

ママにはもう、ため息をついている暇なんて無い。ヨチヨチパワーを持つボクと一緒のママは夜も寝かしつけながら、ボクよりも先にぐっすりだ。その上、すごく幸せそうな寝顔をしているぞ!

「ヘヘヘ。身を投げうって、ママを助けてやったぜ! もうママに眠れない夜なんて無い! よし!! 第三任務 完了!」

これでボクも安心して眠ることができる。

「みんなっ。オヤスミ〜」