弱虫ふうせん

次の日、ぼくは、色とりどりのふうせんを花束にして、おばあちゃんの病室へと向かった。

「ほら、おばあちゃん! ふうせんの花束だよ」

おばあちゃんが、ニッコリと笑う。

「きれいだねぇ。昔、一緒に見たお花畑を思い出すねぇ。ありがとう〜」

また別の日には、青いふうせんで花束を作って病室へと向かった。

「うわ。きれいな青色だこと。昔、一緒に見た空を思い出すね。ありがとう〜」

おばあちゃんはニッコリ笑い、なつかしい歌を口ずさんでいたよ。

ぼくは、ふくらますことができるようになった〝弱虫ふうせん〟をいろいろな形にしておばあちゃんに届けた。

おばあちゃんは、その度に笑顔になった。優しい幸せそうな笑顔だった。そして、ぼくもおばあちゃんも、最後のお別れの時まで、幸せな温もりに包まれているようだった。

それはきっとおばあちゃんが、ぼくにくれた温もり。ぼくに教えてくれた優しさ。

おばあちゃんが、小さい頃からぼくにくれていた、たくさんの温もりや優しさは、ぼくの力になったんだ! これからもずっと、ぼくを支えてくれる力だ!

「おばあちゃん! ありがとう!!」

ぼくは外へ出て、ポケットに一つだけ残っていた〝弱虫ふうせん〟を大きく大きくふくらませ、空へと投げた!

風に乗って飛んでいくふうせんに光が反射して、空が笑ったような気がしたよ!

おばあちゃんが、空からニッコリと笑ったような気がしたよ!!

こわれもの修理屋さん

朝日の生まれてくるところ、そこに一番近い丘の上に、こわれもの修理屋さんが住んでいました。

とても高い丘の上に建つ家だったので、村の人は本当に自分では修理できないものだけを持って、たまにその丘を登って行くのでした。こわれもの修理屋さんは、どんなものでも修理してくれると有名でしたので遠くからでもこわれものを持った人が訪ねて来ます。

お店は、朝日とともに開き、星や月が現れる頃に静かに閉まります。修理屋さんは朝日の中でぐーんと伸びをして働き始め、星や月が現れると屋根裏部屋へ行き星空を眺めながら眠るのです。

そして、雨の日だけお店を閉めることにしています。今日も朝日が光り出す頃、トントントン。誰か、やって来ました。

「はいはい。お入り下さいな」

今日のお客様は、女の子の手をひいたおばあさんでした。

「これ、修理できるかねぇ?」

おばあさんが聞きます。女の子がそーっと袋から出したのはドールハウスです。