第三章 古代からの使者

翌日、磯部准教授に電話し、古代史の基本的なことを教えてほしいと頼むと、彼は気軽に承知してくれた。ではお互いの時間の都合がつくときに、一人の学生のための特別講習会を開催しましょうかと、磯部は冗談交じりの口調でいって笑った。

一応まゆみにもそのことを伝えると、そのときは彼女も来るという。

「あら、そんなに無理して来ることはないわ」

「無理してるんじゃありませんよ。これは編集部長からの指示なんです。沙也香さんだけに負担をかけちゃいけないっていわれてるんです。うちの会社のせいでこんなことになっちゃったんですから」

「そんなこと気にしないでいいって、藤本さんに伝えてくれない? これはわたしがやると決めてはじめたことだから」藤本というのは、まゆみの上司の編集部長のことだ。

「それは部長もよくわかっています。でもそのきっかけを作ったのはうちの会社ですから。それにほんとうのことをいうと、わたしも古代史のことを勉強してみたくなったんですよ」

「ああ、そうなの。じゃあ、一緒に勉強しましょうか」

という経緯で、まゆみも勉強会に参加することになった。

その後の打ち合わせで、最初の勉強会は、二日後に沙也香の自宅でということになった。