第三章 古代からの使者

彼らは正史に大ウソ八百のねつ造記事を書き並べた。そんなことまでして隠さなければならなかったこととは、いったいなんだったのだろう。それを突き止めて明らかにしなければ、聖徳太子の謎は解明できないと教授は考えたらしい。ではどうすれば当時の為政者が隠そうとしたことを突き止められるのか。教授は考え続けた結果、真実の言い伝えを記録した文書を探すしか方法はないと結論したようだ。

その結論から、教授はずっと考え続けた。「そしてあるとき……」という文章を最後に、教授の思考過程が記録されたノートは突然終わっている。いや、そうではなく、その続きが書かれていたはずの数ページが破り取られているのだ。

いったい誰がこんなことをしたのだろう。おそらくこのあとには、教授が発見した重大な事実が書かれていたに違いない。沙也香は教授の昂(たか)ぶった気持ちを感じている。いや、その表現は正確ではない。彼女の中に教授の興奮した感情がそのまま伝わってきているのだ。教授はそれまでの学説を覆すような発見をした。だからまわりの学者から警戒され、監視されていたのではないか。沙也香のところに来ようとしたのは、その内容を伝えるためだったはずだ。

沙也香はもう一度ノートの最後のページを読み直してみた。だが肝心な部分がちぎり取られているために、そこから先の教授の言葉が伝わってこない。そこで思考が断ち切れてしまっているのだ。

ノートを破った犯人は、教授を監視していた誰かだろう。こんな卑劣なことをしてまでも、教授が発見した内容が外部に流出するのを阻止したかったらしい。そうまでして知られることを恐れた新発見とはいったいどんなことだったのだろうか。沙也香は懸命になって考えてみた。しかし古代史に関してまったく無知な彼女に見当がつくわけがない。