「お前も知っている通り、俺は前科者だからな」

禅は下を向くと、黙り込んだ。

「どうしたんだ?」
「いや……お前も知っている通り、俺は前科者だからな……警察官僚のお前には迷惑を掛けたくないから……」

それを聞いて、賢一の表情が変わった。

「お前、何言っているんだ? それとこれとは話は別だろ!」

また、黙って下を向いた禅に賢一は言った。

「お前、忘れたのか? 俺たちは兄弟以上だろ、それは立場が変わっても変わらない、そうだろ? それにお前は罪を償った。そして今は、親父さんの会社をここまで大きくしたんだから……親父さんもお前を許し、今は感謝しているよ」

賢一は、そう言って微笑むと禅の肩を叩いた。

「ありがとう……」

賢一の変わらない優しい言葉に、禅は涙が溢れ出てきた。下を向いた禅を見て賢一が言った。

「どうだ、飲みに行かないか?」

その賢一の誘いに禅は戸惑った。なぜなら出所して以来、酒は一滴も飲んでいなかった。ただがむしゃらに仕事だけに打ち込んできたからだ。

「でも、まだ俺は……」
「たまには気晴らしも必要だぞ、それとも兄弟以上の酒は飲めないのか?」