会社を大きくすることが最高の供養だと言い聞かせた。

「父さん、すまない……本当にすまない……」

そう言って涙を流すと、会社を大きくすることが最高の供養だと自分に言い聞かせ、前を向いた。禅は念願だった営業部を創設した。将来的に自分が別の業務を行うために、営業担当を育てる為だった。

実際、禅ほどではないが、ソコソコの営業担当がいた。会社は軌道に乗っていった。しかし、それを面白くないと思う者もいた。

専務は父の時代から父を支え、二人三脚でやってきたと思っていた。だから、会社を支えてきたのは自分だと思っていたからだ。

しかし、それは専務の勘違いだった。支えたとは言っても、父に、ただくっ付いてきただけで、その恩恵を受けて来たに過ぎなかった。

本来であれば、社長の代役は専務だ。社長が倒れて、次の社長には当然自分がなるだろう……そう思っていた。しかし、ろくに仕事もしたことが無い刑務所帰りのボンボンが、いきなり社長になって業績を上げた。専務にとって、これほど面白くない事は無かった。

所詮、仕事が出来ない奴のやっかみではあるが、社長が倒れた後に業績が悪化し、自分が大した仕事をしていない事が露呈した時に禅が社長になった。そして業績が上がったので、専務の立場は無くなってしまった。

「社長、少し急激に取引先を増やし過ぎでは?」
「専務、赤字を埋めるためには仕方ないんですよ」
「しかし生産ラインが追いつきませんよ」