男性の場合は、表面に出にくい感情的な問題というよりも、もう少しドラスティックなようです。

○元交通関係の男性。面接予定時間に来ない、来ても遅れて来る、勘違いして違う日に来る。仕事はシフトがあり明けの日にはダブルワークをしていたが、寝る時間に無理が来て本業の仕事に遅刻するようになる。

はじめは同僚もカバーしてくれたが、遅刻が目立ちシフトが回らなくなってきた。社員証を紛失した時はきつく叱責され、それ以来、勤務態度をきびしく見られ、ついにいられなくなり、退職。

面接当時、遅れても些細な理由を述べるが、悪気はない。どうにかしようという切迫した様子もない。人当たりはよい。単発の仕事はできるが、長くは続かない。仕事を探す以前に、医療につなげたほうがよいと思われたが、こんな調子なのでメンタルクリニックの予約時間にも行けるとは思えない。

〔遅刻が続く、仕事の段取りが悪い、仕事が遅い、大事なものをなくすなどが多いと、はじめは大目に見てくれたりカバーしてくれたりしますが、そのうちどうにもならず、退職に至ることは珍しくありません。業務に実害があると、やむを得ないことになります。

たとえばこのような傾向のある人が、職場で発達障害ではないかと思われても、上司がゆっくり時間をとって話をしたり、部署を替えたりする余裕のある職場は限られています。受診勧奨もデリケートな話なので現実的ではありません。実際の職場においては、採用職員には仕事ができる人もできない人もいて当たり前であり、できなさ加減が許容範囲かどうかということになります。

周りの人は、退職という結果に至るまではストレスがあり、怒りや不満を同僚と言い合っているかもしれません。発達障害の傾向が強い人で自己主張が強い場合、近くの同僚や直接の上司がうつ的になることもあります〕