二人は顔を見合わせて笑ってしまった。

「美代子、貴女の会社は外資系でしょう、素敵な人がいっぱいいるでしょう、この前の人の事は例外中の例外だよね、あんな男は犬も食わないよ。美代子はきっと以前のことがトラウマになって自分の行動範囲を縛っているんだよ。会社と家の往復だけじゃなくもっと外部の空気を吸いに外へ出たら」

「分かってるけど、どこへ出ろというの、夜の街をぶらぶら歩くわけにもいかないでしょう、独り歩きしていると夜のバイトのスカウトマンに声を掛けられるのがオチよ」

「危ない危ない」と花帆はおどけて見せた。

「お母さまは横浜元町で呉服店を続けておられるのでしょう、出入りのお客様には上流階級のお方もおられることだからきっとお母さまは良い縁談を持って来られるよ」

「お見合いは正直気が進まないね、あの独特の雰囲気が嫌なの」

「ダメもとで割り切ってリラックスして対応するのもいい結果をもたらすかもしれないよ」

「人の事だと思って好き勝手言って」二人は顔を見合わせて笑ってしまった。

「私は子供がいなくてもいいかなと思うことがあるの、煩わしい面もあるし、果たして子供に対して先行き責任が持てるかなと思う、だからちょっと逃げ腰なの」

「今の時代、子供に執着しない夫婦はたくさんいるよ、それはそれでいいと思う」

「よく考えてみるね」

「私は実家にいるから離れて暮らす娘たちと親の関係が良く分からない。さっき話した結衣を今度呼ぼうよ、彼女も子供が一人いると言ってたね。青葉台に住んでいるから近いじゃない、今度会う時私から彼女に連絡する」