迷いながら揺れ動く女のこころ

周りの人も同じように柔軟体操をして、インストラクターが来るのを待っていた。美代子は、初めて参加した時と違い、緊張を感じることなく、周囲に目をやる余裕もあった。インストラクターが駆け足でやって来て、鏡の前に立った。いつものように「皆さん元気してますか?」と言うなり、リズムを刻む音楽が流れ、フロア全体が躍動感に包まれた。

二十分も動くとすでに上半身が汗ばんできた。休憩時間になったとき、お隣の篠田さんが近寄ってきて「山形さん、今日、よろしかったらこのレッスンが終わりいつものミストサウナと風呂に浸かった後、お茶しません? どうかしら?」と誘ってきた。

美代子は、初対面の時から篠田さんとは、同年配ぐらいで気が合いそう、と思っていたので「喜んで。いつもは次のホットヨガも受けるんだけど、今日は大丈夫」篠田さんは嬉しそうに「私、独り身だから、貴女みたいなお友達が欲しかったのよ」と素直に喜びを顔に出した表情をした。そして「後半頑張りましょうね」とポンと美代子の肩口をたたき定位置に戻った。

美代子は品の良さそうな篠田さんに初対面の時から好印象を抱いていたが、まさか彼女の方から声を掛けてくるとは思っていなかった。自分も毎日単調な生活を送っているので、話し相手がほしかった。エアロビクスのリズムを合わせながら少し嬉しくなった。

篠田さんが「私、独り身だから」とふと漏らした言葉に興味を持った。どんな人生を送ってこられたのか、早く篠田さんの口から聞いてみたかった。

インストラクターの「ハイ、お疲れ様」というレッスン終了の声で、一同バラバラになっていったが、篠田さんが「山形さん、サウナの後、支度が整ったらフロントで待ち合わせしましょう。ゆっくり湯船にも浸かってくださいね、じゃあ」と右手を上げて先にフロアを離れた。

美代子は篠田さんの後姿を目で追いながら、スラッと伸びた足や均整の取れた体型をみて、どんな生活を送っているのか、食生活にも興味を持った。ひょっとしたらミストサウナで一緒になるかもしれない、と思いロッカールームへ後を追った。