この教会は何度見ても実に美しい。高い吹き抜けの窓には、ステンドグラスが太陽の光を受け、優美に輝いている。真っ白な十字架の下で、マリア像が優しく微笑みかけているかのようだった。

タクがミコトを振り返ると、ミコトは手のひらに収まるほどの小さな手鏡を覗いていた。自分の姿を気にしているのだろうか。それを見てタクは、少し複雑な気持ちになった。

(やっぱり普通の女の子だ。ミコトだってお洒落したい年頃だよな。なのに、これから戦いか……。その前に、本当に戦えるのか?)

タクには、ミコトは勇者には程遠く思えてならなかった。タクはゴツイ体に強面の顔をしているが、見た目とは全く違い、とても優しい心の持ち主だ。少しだけミコトが、可哀そうに思えたのだ。

だが、そんな思いは次の瞬間、完全に吹き飛ばされた! 一瞬でタクの顔が引きつった。

「ミコト! その鏡は⁉」

タクが青い顔をして言った。ミコトはキョトンとしている。

タクはミコトが手にしている、鏡を指差していた。その指先は、わずかに震えているようでさえあった。