勤労者世帯よりも高い所得を得ている兼業農家

しかし、農業問題の議論はいまでも盛んであるが、現在でもこのような状況は大きく変わっているわけではないのは、山下一仁が『農業ビッグバンの経済学』(日本経済新聞出版社2010年)の「まえがき」でこう言っている通りである。

《そもそも、所得補償と言うのであれば、一般の生活保護に加えて、なぜ農家だけが優遇されるのだろうか。勤労者世帯よりも高い所得を得ている兼業農家に、納税者の負担で所得補償することは、果たして公平な政策と言えるのだろうか。リストラされた人たちやシャッター通り化した商店街の商店主は所得補償されずに、なぜ裕福な兼業農家に納税者は何千億円も支払わなければならないのだろうか。このシンプルな問いに政治は答えなければならない。》

新田は、さらに「補助金のなかでいちばん不正の行われやすいものは団体に対する奨励的な補助金で、これは政治と結びつきやすく、リベートや政治資金の取引ざたになる」と続けている。

新田は、補助金Aは不正が行われやすいといっているのだが、もちろん補助金Bにおいても不正は行われる。先に挙げたスーパーコンピューター補助金不正事件はその例であるが、最近では補助金Bについての不正のほうが多いのではないかと思う。