公庫の融資、県の補助金交付事務といった実務経験をもとに、日本の金融と補助金の問題点を考察していきます。当記事では補助金をめぐる諸問題について、筆者が語ります。

補助金のメカニズムを明らかにすべきだった

補助金による共産党対策は、一部の民間金融機関には迷惑な話であったのだが、商工会等にとっては、もちろんいいことであった。これをきっかけとして、商工会等の国庫補助職員(経営指導員、経営指導補助員、記帳職員等)は増加し、補助金も人員も増え、民商に対抗できる組織強化が実現したのである。そして、共産党も勢力を伸ばすことができなくなってしまったのは周知のとおりである。

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しかし、共産党の退潮は、自民党の補助金による共産党対策が功を奏したというよりは、小選挙区導入の結果であると思われる。私は、中選挙区制のほうがより民意が反映できると考えているが、ここではその問題については触れず、広瀬の『補助金と政権党』に戻ろう。広瀬は「あとがき」にこう書いている。

《補助金が特定の政権を支えるために使われるようだと、民主政治は空回りを始める。地方公共団体はその財源を中央の補助金に頼っており、早くから地方自治の空洞化がいわれていた。補助金の弊害は大きいのだが、世間の関心が、これまで高かったとはいえない。

その一部の責任は野党にもあるのではあるまいか。国政調査権を行使してでも、補助金のメカニズムを明らかにすべきだった。国会の審議を通じてその弊害を国民に示すべきだった。そうすれば、補助金をここまで肥大化することを妨げることができたかもしれない。》

広瀬の言う「特定の政権」は、自民党を指していると思われる。では、社会党だったら問題ないのか。おそらくそうではないだろう。自民党だろうが社会党だろうが、補助金を自分の党の組織強化に利用するのはけしからん、というのが広瀬の主張であろう。

しかし、補助金は政党を選ばない。補助金は、特に補助金Aは行政的なもので、行政と一体不可分である。『補助金の政治経済学』(宮本憲一編 朝日選書 1990年)で2章「補助金と政治・行政─都道府県関係者へのアンケート調査から」の執筆者加茂利男は、都道府県の幹部への補助金に関するアンケート結果を紹介して「むすび─補助金政治・補助金行政の将来」をこう始めている。