殺し屋は喚声を上げ、両手を持ち上げ掌を上向きにした芝居がかった身振りをして、感謝している神が上にいるかのように天井を見上げた。

「まさにあなたは神の摂理がお遣わしになった人。尊敬すべきおかみさんは、もちろん素敵な女性です。でも、国際観光ガイドが声を合わせて絶賛するこのような観光施設には、あなたの母国語以外の言葉で話す人が待望されていたのです」
「ご心配なく、シニョーレ……?」
「ジョルジョ・ジョルダーニです!」

突然、イタリア男が我に返った。彼は額のあたりをたたき、動揺してマナーを忘れてしまう。それから、ゆっくりと堅苦しくお辞儀して、アンカの手を取る。「お目にかかれて光栄です。お美しいシニョリーナ……?」

アンカはグリマルディが自分の手にキスするのを許し、「ラヘラ・クロムバヘルです」と自己紹介した。そのキスは湿っぽくてグリマルディの硬い口髭がアンカの手を軽く引っ掻いた。そして、アンカはグリマルディの眼を見つめた。

「ボスィリチチさんは『午後二時になればお部屋の準備ができますので』と、あなたにお伝えしたいのですよ」

そう言いながら、アンカはちらっと宿屋のおかみさんの様子をうかがった。おかみさんは口元には愚昧な微笑みを浮かべ、頷きながら自分の知らない言語の説明を聞いていた。

「準備ができるまでの間、持ち物をボーイに預けて、ベオグラード市内をちょっと散策することができますわ。この街へは初めていらっしゃいましたか?」
「はい、そうです」と、グリマルディは高らかに言う。
「でも、もちろん最後の訪問にはなりませんよ。弊社はこの地での自社製品の販売拡大にとても興味をもっていますから」