ブルーストッキング・ガールズ

トメはとめどなく「コーンコーン」と鳴いている。

「トメ、いい加減に猿芝居はやめるんだ」

トメはいきなり、親分に飛びかかった。

「よさないか」

さっと身を翻し、トメを突き飛ばした。トメはキッと親分を睨み、「ギャー」と威嚇するように鳴いた。

「目が尋常じゃねえな」
「親分さん、やめて、トメさんを助けて」

美津の目からは涙が溢れていた。

「親分さん、トメさんには治療が必要です。私は、帝大の医師です。親分さん、いいですか、あなたは親御さんから、トメさんをいわば買ったんですよね、高いお金で。そうすると、あなたには、トメさんを守らなければいけない責任が生まれるわけです。トメさんが病気なら、治療させなければいけないのです」
「けっ、社会主義者め。困ったことだ。とんでもないことだ。分かりました。それでは、トメの親御さんには、お金を返していただきましょう。この話はなかったことにしてもらいましょう。手前どもには、トメは商品だ。それが傷物だったら……仕方ありません。品物は返して、返金してもらうだけです」

トメはびっくりして、思わず叫んでしまった。

「そんな、お金なんて、方々の借金を返してしまって一銭もないんだ」
「おや、もう正気に戻りましたか。木島さん少し拍子抜けしましたね。それはそうと、あなたは、人のことにかまけてる場合じゃないでしょうに」