フィレンツェで出会った画廊経営者、コジモ・エステを追え!

「宗像さんとはまだ知り合ったばかりですが、昨日一日ご一緒したことであなたのことが良く分かったような気がしています。それで私は全て話すことにしたのですわ。今の私にとって、この厄介な問題に対して、唯一頼れる方だと思っています」

「ありがとうございますエリザベスさん。それではさっそくコジモに連絡をとってみましょう」

宗像は名刺入れからコジモ・エステのカードを取り出し、ロンドンのギャラリー・エステに電話を入れると、若い男が出た。

「ギャラリー・エステでございます。どちら様でしょうか?」
「写真家の宗像俊介と言います。社長のエステさんをお願いいたします」

受話器の中で相手の男は言った。
「私はベン・プライスと申します。残念ですが現在エステはこちらにはおりません。しかしお急ぎのご用件であれば、本日はフィレンツェ本店にいるはずですので、そちらへご連絡いただけますでしょうか。フィレンツェの番号はご存じでしょうか?」

「分かります、名刺を頂いておりますから。では、直接フィレンツェの方に」

引き続いてフィレンツェに電話をすると、またしてもエステ氏は不在だった。電話を受けた店次長と名乗る男はこう言った。

「急な出張で出かけておりまして、本日はこちらには戻りません。明日の夕方に出社いたしまして、社内の打ち合わせに出る予定なのですが、どのようなご用件でございましょうか?」

「私、エステさんとは面識がございます。今ポルトにおりますが、ぜひともお会いさせていただきたい用件ができました。明日の夜であれば、フィレンツェまでお伺いできそうなので、そちらでお会いさせていただきたいのです。そのようにお伝え願えませんか?」

「分かりました。予定表ではその日は打ち合わせで終わりなのですが、夜のことですし、わざわざいらしていただくとなりますと? それではすぐエステに連絡をとりまして確認し、折り返しご返事を差し上げますので、そちらの連絡先をお教えください」

その間、エリザベスはポルトの飛行場に連絡をとっていた。

※本記事は、2020年8月刊行の書籍『緋色を背景にする女の肖像』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。