以前にも触れたことがありますが、全国国民健康保険診療施設協議会の全国学会の時に、ある村長さんから発せられた血の出るような叫びです。

この村長さんは元学校の校長先生ですが、診療所の医師確保のために大変なご苦労をされていました。日本全国どこでも教師が派遣され、義務教育が受けられる。

それに比べ皆保険になったにも拘わらず、何故地域で医師が確保できないのだ。教師の派遣体制は構築されているのに何故生命を守る医師の派遣体制ができないのだ、という叫びです。

その時から20数年経ちますが、地域医療を守る体制は未だ構築されていません。

それどころか「研修医を終えた後の専攻医の希望先は、東京、神奈川、名古屋、大阪、福岡に集中し他の県から医師がいなくなる」ように地域から若い医師が逃げ出し都会に集まってしまう状況が生まれています。

また医療提供の効率を重視する中で医療機関の統合も図られています。人口減少の将来に備えた体制づくりなのでしょう。でも「救急車で○○病院まで運ばれたがやはり遠かった。今度からはなんとしてもここで診て欲しい」。受診される患者さんから幾度となく訴えられます。

でもそんな住民の悲しい訴えの声は一切無視されています。

地域医療は全国画一ではなく地域の実情に合わせて考えるべきものでしょう。そのためにも行政の担当者は地域に入り、地域の方々がどんな思い、どんな苦労をされているのか、地域の現状をきちんと把握することが大切です。

「どんな仕事をするにせよ、実際に学ぶことができるのは現場においてのみ」(ナイチンゲールの言葉)。

どこにいても安心して医療を受けられるために。