ところが、現在はサラリーマン出身の経営者が増えています。強い志をもって企業を率いるという気概は薄れ、利益追求だけに目を向けがちです。かつサラリーマン経営者には任期があるため、どうしても目先のことに気持ちが向いてしまいがちです。

大事な改革には時間がかかるものですが、じっくり取り組んでいては成果が上がりません。サラリーマン経営者にとってそれは避けなければいけないというやむを得ない事情があります。こうした背景から人間力が強化されることは難しくなります。

サラリーマン社会では目先の成果だけで人物を評価することが多く、目先の成果だけを見て、人物そのものの評価が疎(おろそ)かになるという傾向があります。

私の経験から見ても、人間的に優れたサラリーマンは、力量の小さな経営陣に疎(うと)まれることが多く、途中で切り捨てられるケースがほとんどでした。どうしても個人的な好き嫌いや派閥などが絡んだ情実人事で経営者が決まっていくというのが今の日本企業の実情なのです。

有能な社員が辞表を叩きつけて企業を去った、クーデターを起こし経営者が変わったなどという話もあちこちで聞かれます。また、役員になれば、仕事の大半が人間関係の調整に割かれてしまうという現実があります。

小さな出来事から大きな出来事に至るまで権力闘争に満ちているのが今の日本企業といえます。権力闘争に明け暮れる企業に将来はありません。高い人間力を身につけた者の中から経営者を選ぶ必要があるのです。

つまり、現在のサラリーマン社会では個人の利害や感情が組織を動かすことが多く、これが企業の活力を削いでいるようです。これからは企業全体の利益という視点で、公正にものごとを判断できる人間力を養う必要があるのです。