2 玄米スープの開発に成功

玄米スープとの出合い

このような害虫の生態に始まり、農薬や肥料についてのウンチク、植物の生態、環境問題など、所長の話は尽きることがなく、まるで大学で講義を聴いているようでした。

たしかに玄米は遠い祖先によって食べ継がれてきた食品で、日本人の体は玄米食のなかで形成されてきたといえます。その形成に参与した細胞は、玄米が最大の活動エネルギーであったという記憶を遺伝子に刻み込んでいるはず。

その記憶は子孫代々受け継がれてきました。玄米を食べるだけで、少々の不調ならたちどころに解消されるのはそのためです。

玄米が病気の治療、健康維持に効果があるのは、多くの学者や研究者が指摘するとおりです。農薬や添加物のなかで生きる私たちが、食の救世主とも頼る解毒物質――。それこそが玄米に含まれるフィチン酸なのです。

私が特に着目している成分は解毒の王様フィチン酸と、ビタミンEよりも強い抗酸化作用を発揮するガンマ-オリザノールです。

なお、玄米には、モリブデンやマンガン、ビタミンB1、マグネシウム、リンなどの健康成分も豊富に含まれています。

ただし、強い咀嚼力を持ち、嚙む回数も多かった祖先に比べ、やわらかいものしか食べない現代人は、顎の力も弱くほんの少ししか嚙みません。一説によると、弥生時代の人は、一回の食事で約四千回も嚙んでいたそうです。ところが、現代人は六百回程度と激減しているのです。