はじめに

人の定めは不思議なものですネ。振り返れば、時代は高度成長期から安定成長期へと移行し、オイルショックを経験したものの当時は、まだまだ皆元気いっぱいでした。激動にゆれる昭和の末期を誰もが脇目もふらず、がむしゃらに働き、そして力の限り生き抜きました。

私も当時は四十代前半で、バリバリの仕事人間でした。私が初めて経験した仕事は、アルバイトで入社した芸能プロダクションでの芸人さんたちのプロデュース。これを皮切りにさまざまな仕事に挑戦しました。複数の会社経営で多忙な日々を送る私の元に、ある実業家から「たってのお願い」ということで、とんでもない話が飛び込んできました。曰く、

「私は、ある事情で神奈川県の片田舎にピザハウスを購入しましたが何をやっても手に負えません。大変困っています。吉川さん、何とかなりませんか…………そこを……そこを何とか…………」

「それでは三か月だけ、助け舟契約ということで人材が育つまで尽力します」

というわけで私は、自分の会社を放り投げて東京から神奈川の片田舎へやって来ました。この地、小田急線「大根(オオネ)駅」からほど近い商店街の一角に「アルフレードスピザの店」という大きな看板だけがやたら目立つこの店舗。

店に隣接する五十坪の空き地。駐車場とは名のみ、藪の草むらから、でかいヘビが赤い舌ベロをペロペロ出しながら、あっちからもこっちからも……そしてヘビよりでかいムカデがグニュグニュ、ノシノシ。

八名の学生バイトは
「キャー助けて。あっちへ行って!」

棒でたたく者、泣きながら逃げ回る者、連日てんやわんやの大騒ぎ。道路とて以下同文。大雨の日などは側溝の氾濫は日常茶飯事。道路のあちらこちらで背丈ほどの噴水が足元からいきなり飛び上がります。「オットットット!」狭い道路は渓流と化し汚水がごうごうと流れます。

そんな時代もだんだん遠くかすんでいき、今では駅名も「大根駅」から「東海大学前駅」に変身。久しく訪れる方にとって、この変身ぶりはきっと浦島太郎さながらかもしれません。

思えばその昔、三か月の助け舟契約で応援に入ったあの日、あの頃……そんな時代もだんだん遠くかすんでいき、あっという間に四半世紀が過ぎ、間もなくまさかの半世紀を迎えます。

現在は店名も「すぴなっつおら」に改名し、レストラン経営に加えて食品メーカーとしてのグッドウィルも確立しました。安心安全でおいしい食品の開発に、日々取り組んでおります。「世界最優秀健康維持食品」に認定の「有機玄米スープ」をはじめとして「青梅エキス」等々「すぴなっつおら」ブランド食品はお客様に支えられながら食文化の最前線を担っております。

「限りある人生を限りなく健康で」をモットーに明日の達者をめざします。フランスの有名な食通ブリアサヴァランは次のような言葉を残しております。

「You are what you eat」

あなたの食べるものが、あなたそのものです。私はこう訳しますがみなさんはどのように訳されますか?

これからも食と健康という重い課題を背負って私の飽くなき研究は続きます。本書ではここにいたるまでの道のりと、食や健康に関わる「こわ〜い話」や目からウロコの「新・真実」を体験に基づいて綴りました。本書が皆さまの健康維持に少しでもお役に立つことができれば幸いです。