アリとキリギリス

二年生に進級した二人は対照的だった。

禅は、二年生になると成長に連れ、その才能をさらに開花させた。もはや新三年生の中に、禅に敵う者はいなかった。そして二年生ながら、バスケット部のエースになった。身長も一八〇センチを超え、女子生徒の注目の的だった。一方の賢一は勉強に励んだ。その努力は報われ、学年では、ずば抜けて一番だった。

人は、それぞれに得意分野がある。それは向き不向きとでも言うべきか? 賢一はスポーツには不向きだったが、勉強には長けていた。それが努力と結びつき、さらにその才能を開花させたのだ。

賢一の努力は報われたのだ。

部活で遅くなった禅と、学校に残って勉強していた賢一は、下駄箱でばったり会った。
「賢一、久しぶりだな」
「ああ禅、元気だったか?」
「俺はこの通り、相変わらずさ」
「また背が伸びたんじゃないか?」
「ああ、お前みたいに頭が良くないからな、背だけは伸びるよ」

禅は苦笑いすると下駄箱を開けた。中にはラブレターが二・三通入っていた。禅は、それを賢一に気付かれないように靴を取った。そして賢一が自分の靴を取っている隙に、そっとラブレターを抜き取った。

それは禅の優しさだった。自分がモテていても、人には自慢しないという優しさだ。しかし賢一は、禅が初めに下駄箱を開けた時にラブレターが見えていた。賢一も、それに気付かないふりをしていた。二人は靴を履くと、学校を後にした。