アリとキリギリス

「お前、随分目立っているな」

そこには、そう言って笑う将太がいた。将太は地元の一年上の先輩なので、同じ中学でも一学年上だった。小学校時代からガキ大将だった将太は、中学に上がると、すぐに三年生の不良グループに目を付けられた。

しかし、身長が一八〇センチ近くあり、体重が一〇〇キロ以上の将太は、とても中学一年生の身体には見えなかった。三年生の不良グループは将太に返り討ちにされてしまった。

それから三年間、学校は将太が仕切ってきた。あまり学校も行かず、行っても遅刻したり早退したりしている将太が、部活が忙しく帰りの遅い禅に会う事はなかった。

禅は、小学校の時にやられた記憶が蘇った。黙っている禅に剛史が怒鳴った。

「何黙ってんだよ! 将ちゃんが聞いているだろ?」
そう粋がった剛史を将太は睨んだ。
「お前は黙っていろ!」

将太を見て禅は思った。

“体形は小学校時代とあまり変わらない。しかし成長期になって顔から幼さが消え、さらに怖さを増した”