第5章 社会人に求められる能力とは

言葉が行動力をつくり出す

パスカルも著作『パンセ』の中で大事な言葉を残しています。

わたしたちは、いまだかつて、現在という時にじっとしていたためしがない。
来るのがとてももどかしいので、なんとかその歩みを早めさせようとするつもりなのか、未来の取越し苦労をしたり、あるいは、あまりにも速く過ぎてしまうので、その歩みを引きとどめておこうとするのか、過去を振り返ってばかりいる。
こうして、あさはかにも、わたしたちは、自分自身のものでもない時の中をさまよい、自分に属しているただひとつの時のことを考えようとしない。(中略)だから、わたしたちは少しも生きていない。
(パンセ)※注1

日本文化に目をやれば、「中今(なかいま)」という神道の精神が存在します。

神道には、「中今(なかいま)」という考え方がありまして、噛み砕いて言えば、「今この瞬間のこと」を指します。
ですから、過去がどうであったとか、未来がどうだということではなくて、まずは、今生かされているこの中間地点にある自分の命、あるいは生き方というものを、それこそ手を抜かずに一所懸命に生きていく。
まずそこから始まるというのが神道の考え方です。今こそ、「中今」の精神が重要なのだと感じました。
われわれが今ここに生きていること自体が、奇跡なのです。
(神社本庁総長・石清水八幡宮宮司田中恒清)※注2

このように“今”という時間の過ごし方を自覚するだけで、人は大きく変わり、行動力が顕在化するのです。この“今”を驚きとともに自覚し、その後の人生を歩んだひとりの人物がいます。