只、これは平均値であり、工場別でみると二十工場の中には、生産量も生産性も低いのがいくつかあります。これらの問題工場を閉めて他の工場に生産を移管したいのです。つまり工場の統廃合によって生産性をさらに向上させたい」

「わかります。目標としてはどうなりますか?」
と、斉藤は具体的な目標を高倉から引き出そうとした。

「やってみないとわからない部分があると思いますが、私の見たところでは工場数は二十から十五か十六ぐらいに減らせるのではないかと考えています。もちろん全体の生産量は落さないという前提です。そうすればその分生産性が上がって、コスト競争力が格段によくなると思うのです。そうなれば元々品質には定評のあるマキシマ社のリトレッドだから鬼に金棒です」

「高倉さん、私はこちらに着任してまだ日が浅いのですが、視察した結果ではマキシマ社のリトレッドはかなりユニークで、セールスポイントもあると見ました」

「マキシマ社のリトレッド・システムはプレキュアシステム(あらかじめ加硫した模様のついたトレッドを貼り付ける方法)(トレッドとはタイヤの踏面部の模様のある部分)なので、一般的なモールドキュアシステム(ゴムを貼り付けてから、モールドに入れて加硫する方法)に比べて製法がシンプルなのが利点だと思いますが、他にユニークなポイントとは何でしょうか? 斉藤さん」

「コンプレッション(圧縮)・トレッドです。ゴムをナイフで切る場合、引っ張ってテンションをかけながらやるとスパッと切れます。でもコンプレッションをかけた状態にすると切りにくいです。この原理を応用したトレッドになっているから外傷を受けにくいのです。つまり長寿命になります」

斉藤は幾分自慢げに知識を披露する。

「そうなんですか、それがマキシマ社のリトレッドのセールスポイントですか、わかり易いですね」
と、高倉は益々ほめて斉藤のやる気をあおる。

「販売店統廃合でも述べましたが、これによって閉鎖となる工場の作業者は、出来れば統合する工場に移動させたいと思います。しかし、やむなく工場を去るものは追いません」

「わかりました。早速課題にとり組みます」
斉藤は一礼をして社長室を飛び出した。

よし彼はやってくれるだろう、と思った。

そして実際にその通り斉藤は実行してくれた。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『アパルトヘイトの残滓』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。