ベルギー人の科学者が記事を書き添えていた。
「陰門をざっと調べただけで、人間の女性の生殖器にとてもよく似ている」

聞けば女性も潮を吹く者がいるとか、されば人間もどこかにクジラのDNAと共有するところがあるのやもしれぬ。

クジラをはじめ、シャチ、イルカ、セイウチ、アザラシ、マナティ、ジュゴン、これら海獣類等も哺乳類であるが、他の陸生哺乳動物に比べて大きな違いがある。

それはオスのタマタマが体内にあることだ。

クジラが金玉をぶら下げて泳いでいたとか、海底の岩にソレをしたたかに打ち付け股(また)ぐらをヒレで抑え、尾ビレでケンケンをしているような話は聞いたことがない。

彼ら海獣のタマタマは体内に格納され、お陰で水の抵抗もなく、スイスイと泳げるのである。考えてもみてくれ、クジラは一気に潜水する時、尾ビレを水面高く跳(は)ね上げ反動をつけて海底深く潜っていく。あの時に、オスのタマタマがぶらーんと見えたのでは格好がつかんではないか。

ご存知のように、オスの精子は低温に保たねばならぬが、陸生哺乳類のオスが空冷式であるのに比べ、水冷式の彼らは体外で冷やす必要がないからである。

大学教養部の頃、数学の教授が珍しく芸術の話をしておった。

「若い女性の裸体ほど美しいものはない、鍛(きた)えた男性の裸も美しい、それは完成された数学の方程式の如く完璧な美しさである。しかし金玉だけはバランス的にも不細工(ぶさいく)だ。あれなら吊し柿の方がまだいい。芸術家も、アレを作品の対象にしないだろう。キンタマは万物創造主の唯一の失敗作だな」

教授はそう宣(のたま)うた。

港にある小さな公園で、野良犬のケンカを見たことがある。
貧弱な野良が二匹残飯をあさっていた。そこへ倍以上もありそうな大きなオス犬がやって来た。

たちまち残飯をめぐって争いが起き、大きい方が小さい二匹を蹴散(けち)らし横取りした。

次の一瞬痩せた二匹が前後から襲い掛かった。前の犬に気を取られた隙(すき)に、後ろの奴が大型犬の股間に見事にかぶりついたのだ。声にならない悲鳴を上げ、五、六メートルも引きずる、もう一匹は耳に咬(か)みついておる。転げまわる。断末魔(だんまつま)の鳴き声。漸(ようや)く離れた。

大型がよたよたと逃げる、一〇メートルも行って座り込んで患部(かんぶ)をなめる。また逃げてまた舐(な)める。その様があまりにも惨めで、カッコ悪い。近くのベンチで見ていた二人のおばさんが目を剥(む)いてる。

オイラの存在に気づき、クスクス。

ああ、何たる無防備なタマタマよ。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『お色気釣随筆 色は匂えど釣りぬるを』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。