第二章 釣りもアレも人間は新奇好き

かか様が叱ると娘初手は言い……江戸の川柳にみる猥学、艶学

ところで娘は簡単に許したのでは、尻軽女と思われて値打ちが下がる。

〇 そんなことイヤヨイヤヨと嫌がらず
〇 ダメダメと言いつついつかダメになり

という訳で二人は恋仲になるが、車もなければ、モーテルもない時代。
恋する者は青カンだ、それを昔は「野良出会い」と言った。

〇 野良出会い上でいちゃつく舞ひばり
〇 麦畑案山子(かかし)の前もはばからず
〇 大腰を使うと麦の上に出る
〇 芋の葉でおっぷいておく野良出会い
〇 野良出会い天道様が福の神

福の神は拭(ふ)くの紙を掛けている。次は見合い結婚。

〇 新枕覚悟の前をやっと開け
〇 めくら判押されるように初夜開ける
〇 初夜妻の体位に雲とわく疑惑

何と! めくら判とは。新婚時代も過ぎると、落ち着いた時期に入る。

〇 尻で書くのの字は筆の使いよう
〇 君が代やああ君が代や今幾世
〇 あれさもう牛の角文字ゆがみ文字

君が代は気味が良いの、今幾世は今行くよの掛詞(かけことば)。
牛の角文字は「い」、曲がり文字は「く」

〇 愛想でするとは憎(にく)いよがり泣き
〇 またかえと女房笑い笑い寄り
〇 拭く時は元の女房の声になり
〇 飽(あ)きもせず同じ女房と同じこと
〇 口惜しさは一つ覚えのうちの人
〇 誰が広くしたと女房やり込める