私は、腹部の張りと母になる嬉しさで一睡もできなかった。本日は冬晴れ。

「おはようございます」
と、看護師さんと寝不足な挨拶を交わした。

 

私は、お腹の下部にいる赤ちゃんが逆子だったため、帝王切開になる。何の不安もなく、私は手術室へと運ばれて行った。急だったため、私を見送る親族は誰もいなかった。実家の母と妹にも昨夜連絡したので、今日は病院へかけつけてくれるはずだ。私は母に初孫の双児の顔を早く見せたかった。

手術室は、思ったより広くなく先生方がたくさんいた。さすが、総合病院である。医者の卵が研修に来ている。

私は、主治医の先生と約束を交わした。

「先生、赤ちゃんの産声と顔を見せて下さい。麻酔で眠っていても、必ず起こして下さいね」

と、指切りをした。私は安堵してどっぷりと眠った。昨夜眠れなかった分、爆睡をしたらしい。まだ麻酔が完全に切れていない意識もうろうとした状態の中で、かすかに瞼を一ミリ開けたが、それ以上は無理だった。なんと私が眠っている間に病室に戻っていた。麻酔がまだ効いているため声にならなかった。心の中で思いきり叫んだ。

「先生、嘘でしょう? どうして約束したのに起こしてくれなかったの? 我が子の産声を聞かずに寝ている母親なんて私以外にいるのでしょうか?」

私は、やっと麻酔から完全に目覚めてから、ちゃんと先生に伝えた。
すると先生は、私にこう答えた。

「風間さん、私は一所懸命に起こしたんですよ。でも全く、起きなかったんです」

オー・マイ・ゴッド‼

私は、思わず苦笑した。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『プリン騒動』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。