まず、医師法第21条に定める届出義務が発生する場合については、前記のとおり解釈すべきものである。このように解釈して同条を適用することが憲法第31条に違反することもない。次に、医師法第21条が要求しているのは、異状死体等があったことのみの届出であり、それ以上の報告を求めるものではないから、診療中の患者が死亡した場合であっても、何ら自己に不利益な供述を強要するものでなく、その届出義務を課することが憲法第38条1項に違反することにはならない。

虚偽有印公文書作成、同行使について
虚偽有印公文書作成、同行使の罪については、東京地裁判決をそのまま認めているので省略する。

破棄自判
原判決は、医師法違反被告事件に関する部分につき破棄を免れないが、原判決全部を破棄した上、自判する。医師法違反被告事件については、控訴審で予備的に変更された訴因に基づき、次のとおり判決する。

原判決(東京地裁判決)の罪となるべき事実中、「平成11年2月11日午前10時44分頃」とあるのを、「平成11年2月11日午前10時44分頃及び同月12日午後1時頃から」と改め、「右異状を認めたときから」を「右異状を認めた同月12日午後1時頃から」と改めるほかは、原判示と同一である。

(検案して異状を認めた日時が平成11年2月12日午後1時頃に変更されたが、所轄警察署へ届け出た時点では、すでに24時間を経過していた。)