重要事項07 隙間を埋める神

人間の前にある未知の壁が人間の知識の拡がりにより既知の壁に塗り替えられ、その結果、塗り替えられていない未知の壁が既知の壁の隙間を埋めているように見えるという思想があります。未知の壁は神の手になるものという設定になっていますので、この壁を人間の既知で塗り替えて行くと、未知の壁は狭められ、それに伴って神の権威も益々薄れていくということです。これを「隙間を埋める神」というように表現しています。

神の存在とこの世への関与はさておき、人間に未知なるものはわずかになり、およそ人間にはそのうちに未知なるものはなくなるという考えが背景となり、このような見方が生じたものと思われます。しかし、そうだとしますと、人間はとんでもない思い違いをしていることになります。

人間がこれ迄に把握した知識が素晴らしいものであることを否定する者ではありませんが、事実はそのような見方とは全く逆です。未知の壁は無限の拡がりを持ちますが、人間の知識は、すなわち既知なるものは、有限です。人間の知り得た知識は未知の壁にほんのわずかな隙間を開くことができているというのが実状です。

重要事項08 現象の原理

全ての現象は起こるべくして起こっています。なぜなら、起こるべくして起こっているのでなければ、起こりようがないからです。すなわち、現象にはそれが起こるべき解が存在していることは自明です。これを「現象の原理」と呼びます。

なお、この「現象の原理」は、一切のものは原因があって生じ、原因がなくては何も生じないという原理である「因果律」と同質のものですが、それよりも広い概念で下記の様に表現できるものです。

Xとは、仏教で言う縁(間接条件)や俗に言う種も仕掛けもの仕掛けやメカニズムなどを含めたもので、Yとは「今現在、原因がわからない」もののことであり、Zとは「原因なき原因」のことです。従って、「現象の原理」は「全ての現象(一切)は起こるべくして起こっている」ことを漏れなくそしてわかりやすく表現していることになります。

このように表現しますと、神秘は神秘ではなく、超常現象も超常ではなく、魔法などもなく、現象の原理に基づく通常現象であることがはっきりします。現象自体は、「起こるべくして起こっていて、そうでないなら起こりようがない」のですから、起こるべき解を持っていることは自明です。Yの「今現在、原因がわからない」ということは、現象は存在しているわけですから、その原因は遅かれ早かれ解明されると考えていいことになります。

この例には、現象の原因が現象そのものの中に見出せていないもので、①互いに反対方向に同じ大きさでスピンしている二つの電子のモデルがあり、又、②生物進化の過程やシステムの発展過程において先行する条件からは予測や説明ができない新しい特性が生み出される「創発」と呼ばれるものなどがあります。(①は、第5章B−41光速を超えるもの─非物理学者の夢を、そして、②は、同章B−36創発をご参照下さい)