道路の混み具合は、いつもと変わらないが、翔一のフィアットは、見違えるように変わっていた。『エンジンの調子も、よくなったかな?』と思ったのは、気のせいではなかったようだ。『直してもらってよかったな』素直にそう思えるほど、その走りは軽かった。

2速、3速、4速、3レーンある車道の中央車線を、周りのスピードに合わせて走る。翔一は、スピード狂じゃあない、どっちかといえばドライブを楽しむ。という感じの走りかたが好きらしい。

彼がドライブしてるフィアットX1/9は、1978年式だから、もう10年以上経っている。だけど、丁寧に乗っているからか、さほど手の掛からない車のようだ。

多摩川大橋を越えて、環状8号線を横切る。そのまま、東京の中心へ向かうと環状7号、環状6号も、まとめて横切る。やがてJR五反田駅の、ガード下をくぐる。

なだらかな坂を登りきると、そこは高輪台。高輪プリンスホテルが右に見える。さらに進むと、左手に明治学院大学のキャンパスが見えてくる。

ここまで来たらもう麻布十番まで10分と、かからない。十番の交差点を左に曲ると、右側に東京マハーラージャの本店が見える。

交差点から数えて、3つ目の信号を右折すると超、急な坂が鳥居坂。それを、一気に駆け上がる。

坂の頂上から300メートル進むと、六本木本通りにぶち当たる。そこは、ちょうどロイビルの脇に出てくる路。

翔一のお店My Pointsはもう目と鼻の先。お店の前に、フィアットをとめてドアをロックした。『ちょっと、早く着きすぎたな』左腕にからまる時計を覗くと、7時を少し過ぎたところだった。

※本記事は、2017年9月刊行の書籍『DJ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。