ある日、私は親が旅行で留守にしているというヒロキの家に泊まりに行き、ついに初体験を済ませることになった。彼が寝そべるベッドに腰掛けた途端に後ろから抱きつかれ、行為は始まった。

性的なものに興味を持ってから、そういう画像も映像もたくさん見た。ついに処女を捨てる。しかも相手は大好きな人だ。私は緊張と興奮で胸がいっぱいになった。

しかしいざ挿入となると、私は怖くなって全力で彼を拒んでしまった。

「大丈夫だから」

そう言って童貞の彼なりに優しくペニスをねじ込もうとする。

鈍い痛みを伴って、私は泣き出した。結局行為は中断され、私の初体験はうやむやに終わった。しばらくして、ヒロキに振られた。

それはあまりに突然で、まさに雷に打たれたような衝撃だった。諦めきれずヒロキに考え直してくれと何度も懇願した。しかし彼はもう新しい彼女ができたと私を突っぱねた。

私の何がいけなかったのかを聞くと彼は一言、重いと言った。

確かに私はヒロキを想う気持ちを抑えられず、毎日会いたがった。会うたびに好きと伝えた。

「俺も好きだよ」

たまに言ってくれたその一言に天にも昇る心地になった。

「最初からたいして好きじゃなかった」

別れ際のその一言で、心地よい夢から一気に覚めた。そうか、私が一人で舞い上がって いただけだったのか。幸せだったのは私だけだったのか。

好きでもないのに、彼は私の恋愛ごっこに付き合ってくれていたのか。そう考えるとヒロキを哀れにも思った。

私は失恋した。それは人生で初めての失恋だった。失恋がこんなにも苦しくて、辛くて、悲しいものだとは思いも寄らなかった。この失恋の痛みは、経験した人でないと決して分からないだろう。自分がマンションの屋上から飛び降りたり、高校のすぐ側を流れる川に入水したりする光景を、何度も思い浮かべた。何をしていてもふとヒロキを思い出しては憂鬱な気持ちになる。

その苦しみを紛らわせてくれたのが、雄太だった。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『不倫の何がいけないの?』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。