「俺たちがビクついていてどうするんだ」

早坂は叱りつけるように言った。

「女子と中学生を安心させよう。林、盛江、行くぞ」
「安心させるったって、どうするの?」

林は尋ねた。

「まず、外へ出て何が起きたのか確認しよう。状況を確認し、女子と中学生を落ち着かせ、避難するなら態勢を整え、待機させるならそれなりの指示を出す」
「分かった。行こう、盛江君も」
「よしきた」

林と盛江は早坂の後に従って竪穴式住居を出た。表は満天の星空だった。空気は冷たい。ただ、虫も鳴かない静けさは不気味で、先ほどの鳴動がまるで嘘のようである。林は妙に星に気を引かれた。

「おかしいな」

早坂はスマートフォンを見ている。

「俺のは電波圏内だったはずなのに。盛江、お前のは?」
「こっちもダメだよ」
「ふむ。ネット情報はお預けか」

案の定、他の二つの竪穴式住居から、困惑とも悲鳴ともつかない声が上がっていた。女子の住居――ここには大学生・中学生の女子が共に寝泊まりしている――から、副リーダーの一人・泉晴夏(いずみはるか)が飛び出し、ちょうど眼の前に差し掛かった早坂と盛江に「今のは何?」と、取り乱した様子でつっかかった。

困惑の感情がこんがらがり、怒りの感情になったようだ。早坂と盛江は彼女を落ち着かせ、そのまま女子の住居へ入っていった。

林は一人、男子中学生の竪穴式住居に向かった。ちょうど川田が表に出てきた。彼もまた目を白黒させて、落ち着かない様子である。

※本記事は、2020年7月刊行の書籍『異世界縄文タイムトラベル』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。