3 医学部教養で自由な学習

⑥  一般教養学習の重要性

大学専門学科になると実習などで忙しくなります。それまでの教養課程の限られた時間に、いろいろな経験を積んでください。そして将来社会人として、とりわけ病めるいろいろな人々への思いやりのある、魅力的な人格形成に役立ててください。

前述した海外旅行や留学も大いにお勧めします。またそのような機会がなくても、大学のクラブ活動に専念することもよいでしょう。同じクラブ内はもちろん、他の大学のクラブ員などとの交流も深まります。同じ目標に向かって皆で協力しあう精神は、社会人になってからも役立つでしょう。

このような教養部での豊かな経験が、いずれ医療人としてさまざまな人々を対象とした仕事において、大いに役立つはずです。

医学教育について、ひとつ大切な点を述べておきます。医学あるいは医療では主に病気の人が対象となります。その病気に関する専門分野に取り組むと共に、病める人を対象とすることを忘れないでください。病んでいる人の気持ち、その環境も理解をしてください。そして患者さんの気持ちに寄り添う考え方を、大切にしてください。

患者さんの気持ちを重視しつつ、コミュニケーションをとることは、医療技術がいかに進歩しようとも、決して変わることのない、大切な点です。

またこの姿勢は、医学部や病院で多種にわたる教室や医療チームの方々と接していく上で貴重です。このような人格形成をしっかり体得するためにも、教養の一般学習はもちろん、種々の体験を大切にしてほしいと願います。