第1章 直面する課題の概略~人生100年時代前夜

3.退職したら新しい人生に飛び立つべし

リタイア(退職・引退)とは何か。人生50年以下時代では人生の意味=種族保存期間と生命寿命期間が一致していたので、現役活動からの退職引退は、即あるいはほどなく、この世からの退出を意味していた。

しかし人生100年時代ではそうはいかない。第2の人生が洋々と残されていて、ここから新たな別の現役活動が始まるわけで、消え去りも死去もお迎えもまだまだ来ない。60歳定年退職は人生100年時代においては誠に強制退出制度になってきたわけである。

ただこの60歳強制定年退職制度をどうとらえるかが重要になる。考えようによっては、これを人生100年時代のメルクマール=指標と認識し、新たな全く別の第2の人生の始まり、リスタートのチャンスという考え方もできる。

今までの定年退職者の感想は「やっと40年間会社人生を勤め上げた。飛行機でいえば高度を徐々に下げてゆっくり穏やかに着陸するのだ」。定年退職後の生活・生き方は、今までお付き合いの少なかった地域社会という滑走路を目指してのソフトランディングのイメージである。

しかしながら、第1の人生しかなかったときはこれでもよかったかもしれない。しかし第2の人生が待っている、人生100年時代ではそうはいかないだろう。途轍もない世界、あてがいぶちのない世界へのデビューなのだ。確かに不安もあるかもしれない。迷いもあるかもしれない。ただ寿命が延びたことは、人間にとっては福音=エヴァンゲリオン=良い知らせであるはずだ。

人間は古来、潜在的に、長生きあるいは不老長寿を求めて生活環境、医療福祉に努力を重ねてきた。人生100年時代はその結果なのだ。第2の人生はその成果なのだ。考え方および行動を変えること、思考変容、行動変容によっては、希望に満ちた新しい人生でもあるのだ。

そこに向かってのマインドセット、方向性のスタンスとしてはソフトランディングではなく、新たな第2の人生に向かっての飛翔=テイクオフである。