遠い夢の向こうのママ 毒親の虐待と夫のDVを越えて

数日後、私はすぐに「克己パパに会いたい」と言って長崎に行った。

ママは旅費は出してくれたが、住所や連絡先は教えてくれなかった。

パパの名前を電話帳で見てもみつからなかった。

考えに考えた挙句、私は市役所に行った。

そして窓口の男性に事情を話し、どうしても実の父と会いたいから探して欲しいとお願いした。

事務員さんも困惑していたが、上司の方に相談し、開示しようということになったらしく、調べてくれた。

結果、実のパパは苗字を変えていた。

後から聞くと、暴力団絡みで揉めて苗字を今の奥さんの姓に変えたらしい。

道理で電話帳でも見つからない訳だ。

そうやって住所と名前がわかり、電話帳で調べ、電話すると奥さんが出た。

奥さんはママ達が営んでいた喫茶店の従業員だったらしく、小さい頃の私の遊び相手もしてくれていたらしい。

私は覚えてないが、あちらはもちろん私を覚えていた。

その時パパは長崎にはおらず、パパが留守の家を訪ねると、奥さんがパパの写真を見せてくれた。

私と腹違いの妹も一緒に写っていた。

私とその腹違いの妹もパパ似だから、私と妹もどことなく似ている気がした。

それがなんとなく気恥ずかしく、嬉しかった。

その滞在は数日だったが、新田家には怖くて行けなかった。

当然、山口家に泊まった。

山口家の人も皆「かおるが新田家に帰れないのは当たり前、新田のお母さんからあんなひどい仕打ちを受けてたから仕方ない」と言ってくれていた。