第一章 浩、狙われる!

怖くて身体がガタガタと震え、又飛び下がって後ろの席にへたりこんだ。震えながら死体を見つめていた。何が起こっているのか全く分からない!

ボー然として頭が真っ白に成り、誰か周りに居ないか?と辺りを見回してみたが見渡す限り誰一人見えない! もう一度彼を見ると、手首からチェーンが垂れ下がって光っているのが見えた。

あれは何だ? ガタガタ震えながら、力を絞り出して近づき、チェーンの先を見ると横に置いたカバンの取っ手と繋がっている。手を伸ばしてチェーンを触った途端、手の震えが伝わりチャリ! チャリ!と音がし、びっくりして直ぐ手を離した。

手首と繋がっているカバンは初めて見たが、そう言えば、昔、007の映画で大事なカバンを手首とチェーンで繋げてあるシーンが有ったのを思い出し、ふとカバンのサイドポケットのチャックを震える手で何とか掴んで開いた。

中に厚い封筒が一つと薄い封筒が一つ見つかり、心臓がドクドクと音を立てる中、びくびくしながら取り出してみたら、厚いドル紙幣と航空チケットらしき紙が入っているのが見えた。

急に頭の回転が速く走り出し、カバンと繋がっているチェーンのキーが何処かに有る筈だ!とベルトの周りを探ってみた、直ぐカバンと反対側のヒップポケットに入った異なるチェーンに繋がるキーを見つけた。

そのキーを引っ張り出し、手首のブレスレットの穴へ震える手でカチャカチャ音を出しながら何とか差し込み回したら、スムーズに手首からブレスレットが外れ、カバンから垂れ下がった。

改めてカバンをよく見ると、ブリーフケースのようで厚い革製にしっかりした鍵が付いている。手首の鍵とは異なって見えるが、一応カバンの取手を持ってカバンの鍵穴へ当てて同じキーを差し込んでみたが、全く入らない。

そういえば、首に掛かった不自然なネックレスにキーが有るのでは?と一瞬思い、そっと引っ張り出したらディンプルキーが出てきた。

直ぐそれを頭から抜き出して手に持ち、落ちていた帽子を震える手で拾って頭へかぶせ、少し顔を覆うようにした。気が付いてみると、心臓が早鐘のように打っており、額に汗が浮き出て、手も身体も変わらず震えている。