第一章 浩、狙われる!

ふと、気が付き、何処だ?と思いながらも自分の部屋のカレンダーが目に入った。

横を向いたらベッド下に、チェーン付きカバンと預かった書類が転がっていた。一瞬で思い出し、ベッドに座り、カバンを見下ろす。

もう震えることも無く、転がったカバンとチェーンを手に取り、改めて見た。高級なオストリッチのブリーフケースだ! カバンの取手に付いた金色のチェーンは短いブレスレット風のチェーンへと繋がって、ブレスレットの金色の鍵穴が見えた、其処に嵌まっている鍵が、ブレスレットの端でキラキラ光っている。

ブリーフケースには硬そうな真鍮の鍵が付いて、鍵穴とその下には、小さな小窓が二つ見え数字の5と8を示している。小窓の下の二つの回転ダイヤルを回して数字を合わせ、開ける仕組みのようだ。

先ずは、ポケットから死んだ男の首に掛かっていたネックレスを取り出し、付いている鍵を鍵穴に入れるとスッポリ入り、回したら音も無く回った。

ブリーフケースのフタを開けようと引っ張り上げるが、未だ鍵が掛かっていて開かない。 

回転ダイヤルキーを合わせない限り、開きそうもない。

「此れは無理だ!」

と口に出し、バッグを下に落としてベッドへ再び寝ころんだ。寝ころがりながら、頭の中で思考が走る! ツインロックとは余程大事な物が入っているんだ! 

ましてやチェーン付きで手首にまで繋がっているとは……電車の中で熱心に書類を読んでいた男の姿が目に浮かぶ。

彼は一体何者なんだろう?

初めて見たチェーン付きブリーフケースの重みが頭にのしかかる……。

しかし開けるには番号キーが、壊すしか無いか! でもブリーフケースまで壊してしまうことが、更に犯罪の深みに嵌まるようで、思ってはみてもその気に成りそうもない。

サイドポケットを見ようと、もう一度ブリーフケースを拾い上げチャックを開ける。中には二つの封筒が入っていた。一つは薄い封筒、残り一つは厚い封筒で、一つの厚い封筒を取り出し、よく見たら五十ドル紙幣と二十ドル紙幣がびっしり入っている。

残りの薄い封筒を開けると、ニューヨーク迄のノースアメリカ航空ファーストクラスチケットらしき物が数枚入っていた。取り出した紙幣を掴んで勘定すると百枚有って、よく調べたら五十ドル紙幣が五十枚、二十ドル紙幣が五十枚。

という事は今一ドル、百十円だから此れだけで四十万近くになる。それにニューヨークまでのファーストクラスは百万を超える筈だ! 合わせると百五十万近くに成る、凄い金額だ! それも全てドル紙幣とは……本当にあの男は何者だろう?

やはり、ブリーフケースを開けないと分からないなと思い、もう一度ブリーフケースを手に取ってじっと見つめる。小窓下に付いている二つの回転ダイヤルを合わせる必要がある。

浩が、時間は十分に有る。ツインロック一つの回転ダイヤルの数字を決めて、もう一方の回転ダイヤルを1から順番に回して合わせるしか無いな、と思った時だった。