店主のカエちゃんは、お母さんの店を引き継いでやってるのです。夫の元の勤務先の兄貴分が東京からやってきたときにも何度かお連れして、気に入ってもらったそうです。

路地を入ると、立ちションよけの赤い鳥居が足許に。それがミニチュアながらけっこう本格的作りなので妙に感心しました。

のれんをかき分け店内へ。すると正面から奥へ向かって10席くらいあるカウンターにはずらりとオジサンばっかりでほぼ満席状態。手前左手のテーブル席は、やはり年配のリタイア組らしいオジサンたち。手前右のテーブルは唯一若者グループで、予約して集まったらしく、料理があらかじめ置いてありました。

仕方なく入り口寄りの角の、料理人とは一番遠くて話がしにくい席に陣取りました。カエちゃんはこちらを見て目で挨拶、金曜夜だもの、書き入れ時、おまけに2階に予約していたという9人のグループが入り、大忙しでカウンターの向こうの狭いスペースながら手際よくお刺身を盛り付け、2階へ運んでいました。

カウンターの上には大鉢に盛られたもつ煮込みだの大根の煮付けだの酢の物だのの品々。向かいには階段下のスペースを上手に利用して、お品書きの木札の掲げられた壁面の下にはビールサーバーやら、冷蔵庫やらレジやらが並んでいて、こちら側のカウンターのところの調理台の上と冷蔵庫などの間をカエちゃんを含め30代後半から60代くらいの女性4人が会話もせずてきぱきと動いているのを眺めていました。

揚げ物を揚げる、盛り付ける、運ぶ、注文をとる、ビールをサーバーから注ぐ、運ぶ、焼酎の水割りを作る、などなどを無駄のない動きで一人ひとりが動くのが隙のないチームプレーに見えて感動的ですらありました。

夫は「生中」を頼み、私は運転してきたのでウーロン茶。あーあ、下戸でも歩いてきてせめて1杯くらい飲みたかったなあ。せめてお料理をと、しっかりしょうがの味の効いたもつ煮、おいしい。イカ刺し、新鮮で甘くてこりこり。タコ、ぶつ切り、もぐもぐ。写真を写せばよかった。

何を食べたのかあまり覚えてない。あまりほかでは食べられないもの、と思って、「乙島シャコ」の空揚げを私、「どぜう」の空揚げを夫が頼みました。「どぜう」という表記の仕方は、カエちゃんの母親、先代の女将の書いたものを継承しているためか?階段下の壁に和服姿の先代の肖像画が飾ってありました。

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