第二章 日本民主保守党と先立つもの

こうしてマスコミの取材が開始されると武藤は連日の様にテレビ番組に呼ばれ、新党を立ち上げるに至った経緯などを質され、その度にこれまではシンクタンクという形で政策提言を政府や各省庁へ行ってきたのだが、ほとんど無視され政策提言が実現しない為、シンクタンクという存在から一歩踏み込む形で政策提言がより実現可能となる様に政党を立ち上げ、国会の場で政府に政策提言を迫る事にしたと説明して回った。

 在京のキー局にはすべて出演し、他にBS放送局三局にも出演した。これにより武藤の想像を超える世論喚起を引き起こす事ができた。

こうした背景もあり日本中が注目する中で日本民主保守党の結党大会の日がやって来た。一一月三日祝日、東京赤坂のホテルに与野党の党首、経済界の重鎮、マスコミ関係者等総勢一、五〇〇人程が集まって日本民主保守党結党大会のセレモニーが盛大に行われた。 

来賓の祝辞を与党総裁兼総理大臣の葛城蔵之介がトップバッターとして演台に上がって述べた。

「日本民主保守党結党大会の盛大なる開催に心よりお祝い申し上げます。党首であられる武藤先生には日頃色々と我が国の基本政策でご提言やご助言を頂いております。特に外交や安全保障問題などでは卓越した見識と先見性で色々と助言を頂いて居り感謝申し上げます。

この度はその政策提言をより具体的にする目的を持って、新党を立ち上げられたと聞き及んでおります。今後は国会の場で我々与党の提案に対して、対案を示しながらご質問や対案をお示し頂けるものとしてご期待申し上げております。

これまでの様なともするとスキャンダル追及の場の様な国会論戦が政策論争の場となる事を期待致しまして私のお祝いの御挨拶に変えさせて頂きます、本日はおめでとうございます」

そして野党第一党党首枝村が挨拶に立った。

「ご紹介に与りました枝村です、本日は日本民主保守党結党大会おめでとうございます。ただ正直申し上げまして、野党の私としては野党として共に与党の横暴に共闘して行ける存在なのか? 党名に保守とある様に世界の潮流や世の中の流れに逆らうかのような存在なのか、その実態をつかみ切れておりません。

皆さんご存じの様に世界の潮流はSDGsに象徴されますように持続可能な社会づくりであり、世の中の流れは、LGBTに象徴されるようなダイバーシティの実現という性別、人種、信仰を問わず公平公正な社会を築いていこう、そんな世の中を大きく変えていこうという大変革の時にあります。

その中で敢えて党名に『保守』と明記されている点にも我々は大いに関心を寄せているところであります。ただ、我々は多様性を認める立場から、先輩野党として温かく見守る事をお約束してお祝いの言葉に代えさせて頂きます。本日はおめでとうございます」

と締めくくった。