第二 雑歌の章その二  

()(がれ)

高校入学してからの数日、梨花が変に気を利かせ朝陽と自分の二人だけで帰るように仕向けていた。それを朝陽が勝手にいいように勘違いしているのだと美桜は思っていた。

「私たち一度も付き合ってません。それ、大きな勘違いだし。私、好きな人できたから……今日でクーリングオフ」

「おい、そのクーリングオフってなんだよ」

「高校で私に悪い虫がつかないように傍にいてもらっただけだから、ただそれだけ」

「俺の役目は害虫駆除か」

「そう、その害虫駆除係が一番厄介な害虫になってるから」

「俺様が害虫だと。おい、今なら許してやるから考え直したっていいんだぞ」

「だから私、好きな人ができたんだって」

「いつ、誰だよ……それ」

「――今日だけど、教えない。絶対に教えたくない」

「たく……もう、お前には俺しかいないだろ。まあいいや、俺以上のやつはこの学校にはいないから戻ってくるまで少しの間だけだったら待ってやるよ。でも、あんまり待たせるとリカにしちゃうかもしれないぞ……いいのかよ」

「だったらリカにすれば。私――全然、間に合ってますから」

そう言うと彼をそこに置いて彼女は走って行ってしまった。朝陽の運動神経は誰よりも優れていたので、どのスポーツをやらせても全て人よりも器用に上手くこなした。顔はバランス良く整い男前で背も高く、小学校以来、女子生徒の注目の的となり常に引く手あまたの人気者で女子の気持ちなど考える必要もなかった。

唯一、このモテ男の彼に立ちはだかり巨大な壁を築く女子がいる。他の女子生徒と違い、彼が気を使わないと振り向いてくれない二人……美桜と梨花。彼にとっては彼女たちの冷たい態度が新鮮でその巨大な壁を乗り越えることにやりがいを感じている。

「やっぱ、あいつら……一筋縄じゃいかねえな。それにしても何考えてんだか、さっぱりわかんねえや。でも絶対に諦めないぞ。かえってやる気でてきたしな」

とこんな具合なので美桜の想いなど彼が理解できるわけもなかった。

帰り道を歩きながら、梨花は美桜が言いかけた言葉の続きに思いを馳せていた。美桜の口から出かかった、「初めて……」に続くはずの言葉が何かわかっていたので、その後の言葉を聞かなくて良かったとさえ思える。なぜなら彼女と自分が同じ想いになっているから。

あろうことか二人で同じ男子生徒を(こい)()めてしまい複雑な気持ちになっていた。