次の日、千佳と圭は朝から逗子海岸にいる。

二人はウインドサーフィンの道具を砂浜まで運び、さっそく千佳の新しい道具をチェックしている。

「なかなか良い道具じゃないか。ちょっとこのボードの上に立って、スタンディングのフォームを見せてくれないか?」

千佳が砂浜の上に置かれたボードの上に立ち、フォームを見せる。圭は右手の親指を上に上げ、グッドのサインを出す。

千佳は一人でボードを海に浮かべ、その上に素早く立ち上がり、ブームをつかんで沖に滑走していく。スピードは出ていないが、なかなか見事だ。千佳はゆっくりと沖を滑走して圭のところまで戻ってきて、「うまくなったでしょう!」と叫ぶ。

圭もそれを見て、ボードに飛び乗る。

「今度は一緒に沖を滑走するぞ。そんなに飛ばさないから、俺のセールの操作をよく見ながらついてこい」

圭はボードに乗ってゆっくりと海の上を走らせながら、千佳が自分のところまで追いついてくるのを待つ。千佳が近づいてきたところで、大きく体を倒してセールに風を受け沖に向け滑走し始める。千佳もそれを真似てセールに風を受けて圭を追いかけていく。千佳のセールもいっぱいの風を受けて高速で滑走を始め、それはまるで空を飛んでいるかのようでとても気持ちが良い。

圭は追いかけてくる千佳を見ながら、セールと自分の体を入れ替え、セールを反転させることを繰り返し、ジグザグにどんどんと沖に進んでいく。圭が取るコースは風と波を慎重によく見て進んでおり、千佳がついていきやすいコースだ。

【前回の記事を読む】「仕事をしているオンの時と、オフの時をはっきり分けたいんだ」と不機嫌に…。