運命の出会い

玲子は部屋の中を見回し、「清潔で落ち着いた感じの良い部屋ね。リビングの窓からは海が見えるのね」と言い、リビングに置いてある青色のL字型の大きなソファに腰を下ろす。前に置いてあるテーブルはシックな四角いテーブルで、その下には茶系のラグが敷かれ、前の壁には大きなパネルの写真が掛けられている。

キッチンでコーヒーを沸かしている圭に、感嘆の声が聞こえてくる。

「圭、この大きなパネル、とても素敵な海の写真ね。海も空も神秘的な瑠璃色に輝いているわ。自分の心と体がこの写真の中に吸い込まれていくように感じるわ。朝の海かしら。子供の頃、ママと一緒にここの海に来た時、ママが瑠璃色の朝焼けの話をしてくれたことがあったのよ。ここの海で撮った写真なの?」

キッチンから返事が返ってくる。

「そうだよ。それはヨッサンが、店の前の遊歩道から撮った写真だよ。ヨッサンはよく夜明け前から、カメラを片手に遊歩道を散歩しているんだ。その写真はヨッサンが散歩している時、偶然に瑠璃色の朝焼けを見て、あわててカメラを向けて撮り、わざわざパネルにして俺にくれたのさ」

玲子が聞く。

「圭もよく夜明け前から海に出ているでしょう。こんなに綺麗な瑠璃色の海でサーフィンができるのね。とても羨ましいわ。こんな色の朝焼けは、この辺の海でよく見ることができるの?」

コーヒーを運んできた圭が言う。

「俺は夜明け前から海に行くことが多いけど、残念ながらこんな色の空と海を一度も見たことはないよ。ヨッサンでも数回しか見たことがないと言っていた。いろいろな気象条件が重ならないと、こんな神秘的な青色にはならないと聞いたよ」

ソファにゆっくりと腰を下ろした圭も、パネルの写真を見る。

「この朝焼けに出会えたら奇跡だよ。朝日が昇り始める前、暗闇から空が明るくなる前のほんの数分間だけ、海と空がこんな色に染まっていくという話だよ」

玲子がため息をもらす。

「私もこんな瑠璃色の朝焼けに一度出合ってみたいわ。とても神秘的で、まるで幸せを運ぶ青い鳥が、こちらに向かって飛んできそうだもの」

圭の入れてくれたコーヒーを一口飲み、玲子が「このコーヒーとてもおいしいわ」とほほ笑む。

コーヒーを飲み終えた玲子が立ち上がり、横にある大きな書架に並ぶ本に興味を示す。