運命の出会い

「まあこれでなんとか、英文科にふさわしいレポートの体(てい)は成したな。これからカレーを一緒に食べようぜ」

カレーの話を聞いて、千佳がまたバンザイをする。

テーブルの上には煮込んだビーフカレーとスープ、野菜サラダが置かれている。圭のカレーは料理教室に通って研究した特製だ。千佳は手を合わせ、「いただきます」とおいしそうにカレーを食べ始める。千佳は一気にカレーを食べ終わり、直したレポートを急いでUSBメモリにコピーする。千佳はそれを大切そうにバッグの中に入れ、喜んでバイクに乗って帰っていった。

その日、圭は夜明け前からサーフィンをして自分の部屋に戻っている。

そこにヨッサンから携帯に連絡がある。

「あのお医者さんの玲子さん、先週も今週もこの店に車で来て、前の海でサーフィンをしているよ。今日も海を上がってからこの店にやってきて、圭のことを聞かれた。今、玲子さんはシャワーを浴びて店の前のデッキの椅子に座っているよ」

圭はヨッサンからの電話を受けてすぐ自転車に乗り、大急ぎでヨッサンの店まで行く。

玲子がデッキの上の椅子に一人寂しそうな顔で座っているのが見え、圭は自転車に乗ったままデッキの近くに止まり、笑顔で声をかける。

「玲子、新しいサーフボードの調子はどうだい?」

玲子は自転車に乗ってやってきた圭を見て、嬉しそうに返事をする。

「圭が選んでくれたサーフボード、とても気に入ったわ。先週も今週も前の海で圭がサーフィンをしないのは、ひどい風邪でもひいていたからなの?」それを聞いて笑う。

「俺は風邪なんかひいたことないなあ。先週と今週の朝方は、ここよりいい波が立っている江ノ電の鎌倉高校前で、夜明け前からサーフィンをしていたよ。玲子、よかったらこれから俺のところで、俺が入れるとても美味いコーヒーを飲んでいかないか?」嬉しそうな返事が返ってくる。

「じゃあ、お言葉に甘えて家におじゃましてみようかな。圭の家はどこなの?」圭は簡単な地図を書いて道順を教え、地下駐車場の入り口も伝える。

「玲子、ここを出て、サーファー通りの二つ目の信号を右折すると、五階建てのマンションが見えてくる。このあたりには高い建物がないからすぐにわかるよ。車は地下駐車場にある来客用の駐車場に止めてくれ。駐車場の入り口で守衛さんに、515号室の東山の客と言ってもらえれば、車を通してもらえる。じゃあ、俺は先に地下駐車場で待っているよ」