まさかの再婚

もう結婚はしないと誓ったはずが中学時代からの幼馴染みと再婚してしまった。

お互い、離婚経験者。私が先に離婚していたので励ますつもりで一緒に飲みに行って、飲みすぎて後は覚えていない。朝、目覚めたら、次の夫となった人が隣で「おはよう~」と照れていた。なんてことだ、頭がパニック。どうやら逃げられない状況になったらしい。

しかし、彼は幼少期に父親が病死、高校生で母親を亡くし天涯孤独になった弟のような存在。放置できなかった。いつの間にか自分が傍にいてあげたいと思ってしまった。

しかも遠距離恋愛。社長の他は彼しか従業員がいない零細企業勤務だった彼に、遠距離で会うための交通費を出せるほどのお給料はなかった。なので、私がチケットを買って彼に会いに行っていた。

彼と会うためにはお金が必要で、夜勤の回数を増やしたが、彼はその間に浮気していたこともわかった。それなら、別れましょう。私が傍にいる必要はないね。

バカみたい。一時、かの地で開業して仕事することも考えて病院長たちに相談までしたのに。

彼と別れた直後、私は母校からお誘いを受け大学教員になることを決め札幌にとどまった。あ~、すっきりした。もう男はなし、仕事に専念しよう。

そう思った矢先、彼が札幌に就職を決めていきなり現れた。逃げられなくなった。

そして、三十二歳で目の前に男が現れたら、ついつい「子どもが産めるかもしれない」と思ってしまった。二回も妊娠して産めなかったから、産めるなら産みたいとつい思ってしまった。産むなら最後のチャンスという悪魔の囁きも聞こえた。もうホルモンも限界、女のサガというやつ。

しかも、彼は改心して、「あなたの仕事を支えたい」、とまで言ったので、それを前提に再婚した。姑がいないことや父のようにゴルフや高級趣味をしないこと、私の言うことを聞いてくれることなど条件がそろい、逆にカモがネギをしょって目の前に現れたと考えるべきかもしれない、そう思ってしまった。

しかも、高校の同級生だ。何かあれば友達が支えになる、と同級生を保険にかけた。これが、あだとなると思わずに。そう、離婚で、私は自分の高校時代の友人をも失った。皆、彼の生い立ちに同情していたのか、気の強い私のせいで離婚したのだと思っていたようだ。

誰も、彼のDVを信じてくれなかった。私は、高校の同期会に行くことができなくなった。