第一章 そして母になる

私は助産師、歴三十五年。助産師は、戦前は「産婆」と言われていた職業だ。最近は、助産師と言った方がわかりやすく伝わるようになった。

テレビドラマの影響力かもしれない。『コウノドリ』(鈴ノ木ユウの漫画、「モーニング」で2012年から連載、その後TBSでテレビドラマ化)のテレビドラマは、助産師教育者の中でも「すごい」と絶賛されている。なので、講演会で「私は助産師です」というと、「へえ~!」と何だか歓迎されて嬉しい。

助産師は、誰もが産まれてくる時に、一番にその肌に触れる人、最初に出会う人。

出産の介助時は、新生児が目を開けた時に最初に見えるのがママの顔であるよう配慮はしているつもりだ。だが、うっかり私たちが先に目を合わせてしまう時もあり、それは本当にごめんなさい。

もちろん赤ちゃんは、この人ママじゃないってわかるから違う意味でも泣きますけど。助産師はお産という戦場を共に闘うママの戦友。英語では、母と子の間に立つ者として、ミッド・ワイフと表現される。

助産師とは、母と子の傍に寄り添い、母子関係を見守り支えることを業とする者だ。