軸保持短縮法

大腸は逆さ「コ」の字とS字が組み合わされた形をしています。S状は個人差が多く、まっすぐではありません。縦にまっすぐの腸は体に固定されていますが、横行結腸とS状結腸は腹腔内で可動性があるという特徴があります。

一方で内視鏡用のカメラ(スコープ)は性質上緩やかにたわみますが、どうしても硬さがあります。そのため、腸の曲がり角をカメラが通るときに、カメラが当たったり、力で押してしまったりすることでおなかが張るといった苦しさを感じます。そういったことがないように、私のところでは「軸保持短縮法」という方法で挿入しています。

通常の腸が広がったアコーディオンだとすると、カーブがあるたびに内視鏡カメラが当たって痛みやおなかの張りを感じやすくなります。そこで、広がったアコーディオンをたたんでじゃばらの腸を短くストレートにして形を変えながら、腸の真ん中(軸)にカメラを通していくといったイメージで挿入していきます。すると腸の曲がった部分に内視鏡カメラがぶつかることなく、スムーズに入るようになります。

医学的にとらえた腸の特徴と内視鏡カメラの特性をそれぞれコントロールし操作する技術です。私はもともとは外科医でもあるので、内視鏡医として検査や治療をしつつ、外科医として手術も行っていました。

外科医として実際に開腹手術を行っていたので、教科書的な知識だけでなく、腸はどんな形になっているのか、どのような形状でおなかの中に納まっているのかをよく知っています。その知識も併せて、どう挿入したら患者さんがつらくないのか、ということを日々考えていました。

ただし、すべての人の腸がこの方法での挿入が適しているわけではありません。患者さんにとってつらくない方法を取捨選択しながら検査に取り組んでいます。

良質な炭酸ガスを使う

大腸内視鏡検査のときは、炭酸ガスを入れて大腸を膨らませて内部をよく診ます。施設によっては水や空気を入れるところもあります。炭酸ガスは、体内に自然に吸収されるスピードが速く、検査後に腸が張って苦しいという症状が抑えられます。

炭酸ガスはもともとは腹腔鏡(ラパロ)の外科手術で使用されていた技術です。ただの空気を注入することに比べるとコストはかかりますが、皆さんがつらくない検査を受けられるように使用しています。

検査後はリカバリールームでゆったり

検査後は鎮静剤の影響もあって意識がぼんやりすることがあります。検査後ふらつくなどまだ検査のストレスがあるのにすぐに移動するのは危険です。

当院では検査したベッドのまま、ご自身で移動しなくても検査後ゆったり休憩することができます。検査後、ゆったりとしたスペースで、体調が戻るまで休めることも、患者さんにとっては安心して検査を受けられる理由のひとつです。

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