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第1章 入居者と暮らしを創る30のエピソード

8日目 食事は最大の楽しみ

食事は、老人ホームの入居者にとって一番の楽しみであると言っても過言ではないでしょう。食事には、「食べる側面」と「楽しむ側面」の両面があると思います。

まずは食事を「食べる側面」から考えてみます。老人ホームを運営する者として、「食べる側面」に重きを置き過ぎる、つまり「食事をお召し上がりいただく」というよりも「食べ物を提供する」という考えが強くなると老人ホーム側の論理が中心となり、入居者にとって何よりも楽しみである食事が、単なる「食べ物」となってしまいます。老人ホームは入居者に対して、安全に食事提供すれば良いとなってしまうでしょう。

次に食事を「楽しむ側面」から考えてみましょう。この視点は、入居者に食事を楽しんでいただく側面を盛り込むために運営の質を高めることが必要になります。では、具体的にどのような点に注意していけば良いのでしょうか。

それは、第一に施設側がしっかりと毎食、入居者が召し上がる食事を試食すること。

そして第二に入居者の皆さんからの食事に対する感想や意見を集約し、必要に応じてこれを反映することです。

ひとつ目の食事の試食についてですが、私の運営する老人ホームでは、入居者に食事提供する準備段階で、厨房にて試食を行い、料理の味付けを事前に確認します。試食段階で確認するポイントは、「①味付け、②色合い、③盛付け」です。

この①〜③について、私が違和感を覚えた場合、「その場で」料理人と向き合いながら、その料理を一緒に試食してみます。

ここで大切なのは、料理人と向き合って、一緒に試食すること。気づいたのであれば、その場で伝えることが一番大切なのです。あとからとなると、料理人に伝える内容があやふやになる。そうすると相手に伝わらず、結果、改善されないことになってしまいます。

二つ目の入居者の皆さんからの食事に対する感想や意見を反映させる点については、具体的なストーリーでご紹介したいと思います。

食事は、一口に「美味しい」といっても、入居者の皆さまの方々の嗜好は千差万別、生まれてから様々な環境で育ち、味付けの好みも異なるものです。