【前回の記事を読む】医師として必要な“人間力”を見極める…面接試験への理解

2 医学の分かれ道

⑤入学試験での面接は人間力

学生側としても面接の際には、そこで何が求められているのか、を把握して臨んでほしいと思います。さらにはめでたく入学を認められた学生は、その後医師として、成熟した社会人としての素養や、積極的に学ぶ姿勢を、忘れないでほしいところです。大学教員としても、そのような素養をしっかり身に付けさせることにも主眼をあてて、教育活動を進めたいものです。

ここで集団面接での私の経験を紹介しておきましょう。医学部受験には今のところ直接は関係ないことを、あらかじめお断りしておきます。私の履歴にもあるように、高校生の時に米国で勉強することにあこがれて、日米の交換留学制度に応募したことがあります。難しい英語などの試験を通過した後、最後は全国から東京に集合して、面接の最終試験がありました。

まずは集団面接でいろいろな社会情勢についての討論をしました。自由な発言の中から、積極性や協調性、さらには人格に至るまで、留学生としての適性を評価されたのだと思います。その場では必ず積極的に発言するべき、と言われていました。他人の意見を尊重しつつ、自分の主張をしっかり伝えました。

受験者のひとりにおとなしそうな候補者がいて、自分はなかなか発言しづらいから、座長になりたいと希望して、皆の同意を得て座長に回りました。でも議事進行やまとめが、あまりうまくされてなかったからでしょうか。総合討論に参加した皆は合格したのですが、気の毒に座長に回ったその人だけが落とされてしまいました。

このような発言能力は、確かに米国留学をした際に強く求められました。米国はまさに自由な意見交換や討論をしていく場がたくさんあります。小さい頃から自分の意見をしっかり主張することを教育されてきています。そして周りの人と上手に討論することの重要性を教えられているのでしょう。

日本のように控えめにする、といった姿勢は評価されません。発言しないと落第するような授業も多々あります。日本では昔から重んじられてきた奥ゆかしさ、などの考え方を批判するつもりはありません。でも大学生でも、また社会人としても、相手の意見をしっかり聴いて、その意見を尊重しつつ、自分の意見を上手に述べて、討論を進めて行く姿勢は、日米を問わず大切だと考えます。

特に病める患者さんはもちろん、将来一緒に仕事をする医療チームに対しても、相手を尊重しつつ、的確な意見交換をしてください。まず相手の意見を上手に引き出し、それにしっかりと耳を傾けることが大切です。その中から自分の意見を示すこと、そしてどのように対処するとよいのか、を含めて最善策を一緒に考えていくような姿勢が、これからいろいろな場で求められるように思えます。