【前回の記事を読む】長文を読む力…国立大の医学部受験は「理系」だけじゃ受からない!

2 医学の分かれ道

⑤入学試験での面接は人間力

教員の立場から、入学試験の面接について説明します。私自身大学教員として、医学部入学試験やその条件などについて、何度も会議で議論し、皆と共に熟慮してきました。将来医師として人との接し方や社会人としての素養が大切、と思うのは、多くの大学教員の共通した考えです。

その素養を評価するために、ほとんどの大学が面接試験を課しています。最近東京大理科Ⅲ類でも、この面接を取り入れるようになりました。優れた成績だけで合格できてきた受験生にとって、また新たな壁ができて大変になった、と伺っています。

でもこの面接による審査は大切です。どんなに優れた学力があっても、人と接すること、自分の意見などを前向きに述べる力が、医師としてもまた医学研究者としても求められるのです。職業としての意欲などに乏しい人は、どこの大学医学部であれ、ふさわしくないと考えます。

もちろん将来は、動物実験などを用いた基礎的医学研究者となるから、との考えもあるかもしれません。でもそのような基礎的研究分野でも、周囲の研究者と詳細な意見交換をして、皆の納得できる研究を推進する必要があります。多くの方が進む臨床の医師の道はもちろん、純粋な医学研究者を目指す場合でも、面接で社会人としての素養や人間性を、十分評価してもらいたいと考えます。

実際面接で学生に求められるのは、医師としての自覚や、医師となるための人間的な成熟度などです。医師は、人の命を預かる職業であり、重い責任を伴います。面接では受験生の医学部志望の動機から、そのような職業に就く自覚がどの程度あるのか、などが問われます。また患者とのコミュニケーション能力など、医師として必要な能力や、人間的成熟度を確認されます。

さらには社会的な視点から、適切な医療行為を行えそうな人物であるか、という点もみられます。端的には高校時代に生徒会活動やクラブ活動、さらにはボランティア活動などを通して、学校内外での社会貢献の経験などあれば、面接や書類などで紹介してもらいたいものです。

もちろん、このような医師としての人間形成は、大学入学後に進めて行くべき大きな教育課題でもあります。でも入学前にそのような素養を見ておきたい、とする大学側の立場も理解していただきたいものです。これは学歴や入学試験の成績とは異なる、人物評価そのものです。